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東京高等裁判所 昭和45年(ウ)1113号 決定 1971年2月18日

申立人 豊田こと兪貞子

主文

本件申立を却下する。

理由

異議の申立に基きなされた仮処分命令取消の判決は、性質上形成の裁判と解すべきであつて、これに仮執行の宣言が付されることによつて、その言渡と同時に直ちに効力を生じ、先になされた仮処分命令は失効し、あたかも仮処分命令が発せられなかつた以前の状態に復するものというべく、右判決に対し控訴がなされ、控訴審において審理の結果、原判決を取消し、原仮処分命令を認可することによつて仮処分の効力が回復されることがあるのは格別、民事訴訟法第五一二条の規定による強制執行停止命令によつてすでに失効した仮処分命令の効力を復活させることはできないものといわなければならない。しかのみならず、民事訴訟法の右規定による強制執行の停止命令は、仮執行宣言が付された原判決による強制執行の停止を目的とした一時的な仮の処分であつて、停止せられるべき本来の執行行為(いわゆる狭義の執行行為)が可能であることを前提としているところ、仮執行宣言付仮処分命令取消判決は、なんらの執行手続を要することなく、その言渡により直ちに仮処分命令を失効せしめる効果を生ずるのであるから、右判決については右の規定を適用すべき余地はないものといわなければならない。しかして、以上の理は、仮処分命令に対する異議申立の制度の趣旨にかんがみても、また、仮処分申請について口頭弁論がなされ、右申請を却下する判決がなされた場合との権衡上からも首肯できるところである。

されば、民事訴訟法第五一二条の規定に基づく本件申立は失当としてこれを却下すべく、主文のとおり決定する。

(裁判官 平賀健太 石田實 麻上正信)

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